インドで歴代興行収入1位の成績をあげ、アメリカをはじめ封切られた各国でヒットした作品である。インド映画でありながら物語の舞台はアメリカのシカゴであり、その中で銀行につぶされたインド・サーカス経営者の父の復讐を図る息子が銀行に挑む、という内容に、インド風ミュージカルやオートバイ・チェイス、恋愛などをたっぷりと盛り込んだ作品となっている。
シカゴでインド・サーカスを経営する父が、銀行家の悪辣な手段にあい倒産してしまい父は自殺してしまう。20年後、その銀行はたび重なる大胆不敵な金庫破りに会い、しかも盗んだ大量の紙幣は銀行のビルからばら撒かれ金庫にはヒンディ語で書かれた言葉が残されるという奇怪な出来事が起こる。犯人は自殺した父の息子であるカーヒルだった。成長したカーヒルは父譲りのマジックと類いまれな身体能力でサーカスの再興を目指しながら、同時にその身体能力を生かして銀行破りをしていたのだ。シカゴ警察は、金庫に書かれたヒンディ語から犯人はインド人とにらみ、インドから敏腕刑事であるジャイとアリを呼びよせた。マジックと豪華なショーを融合した大サーカスに必要な美姫をオーディションに応募したアーリアにその資質を認めたカーヒルは、銀行から奪った金を元にしてインド・サーカスを立ち上げた。その初日、次の金庫破りが起こる。主任のジャイは有り得ない金庫破りの手法と、逃走時の凄腕の身体能力で高速バイクを使用するやり方からカーヒルの犯行を疑う。ジャイとアリは犯人をビルの屋上に追い詰めるが唖然とする方法で屋上から脱出してしまい、バイクで逃走をはじめる。ジャイとアリはその高速バイクを追跡するが逃げ延びられる。しかし途中、ジャイの放った拳銃で犯人を負傷させる。カーヒルを疑っていたジャイは、すぐさま開演中のインド・サーカスを訪れカーヒルの躰を調べるが傷ひとつない。そこにはカーヒルが秘めた一大トリックがあったのだ…。
実はこの作品は、残念ながらこの一大トリックあたりから急速に面白さが失われてしまうのだ。全編を貫く高速ハイテクバイクと警官の超トリッキーなチェイスも何回も見せられると飽きてしまうし、後半の物語りの流れがウェットな描写が多くなり、しかも流れが雑になってしまうので、147分という長さがもたれてしまうという致命的欠陥が生じる作品と化してしまった。シカゴを舞台にして張り切りすぎて色々な内容を詰め込み、結果的にはそれが裏目に出てしまった、と言ってもいい作品であった。
ぼくのチケット代は、1,900円を出してもいいかなと思う作品でした。
星印は、2つ半をさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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