1977年、ブロードウェイで開幕したミュージカル『アニー』は、上演回数2,377回、6年間のロングランとなった。この大ヒットを受けて1982年、映画化された作品は、舞台の内容(主人公アニーは白人の赤毛の少女。1930年代、アメリカの大恐慌時代、孤児院で暮らす利発であかるい性格のアニーが、未来を信じて前向きに生活し、ついに幸せを手に入れる)に忠実に沿ったドラマ構成であったのに比べて、今回の『アニー』は内容の他はガラッとリニューアルした構成となっている。
まず舞台は現在のニューヨーク。10才の黒人少女アニーは、里子政策の助成金目当てに元歌手のミス・ハニガンが身寄りのない少女たちと生活しているアパートで暮らしていた。4才で親から捨てられたアニーだが、その明るい前向きな性格で近隣の住人たちから愛されていた。ミス・ハニガンは前の歌手時代の生活が忘れられず、助成金目当てのこんな生活を恥じて、一緒に生活する少女たちに当り散らす毎日を送っている。
そんなある日、野良犬をいじめる少年たちから犬を救おうとして道路に飛び出し、車にひかれそうになったところを男性に助けられる。その男性、ウィル・スタックスは市長選に立候補していた携帯電話会社のオーナー。裸一貫でIT長者にのし上がった辣腕の男だが、自分だけが頼りの孤独で偏屈な性格ゆえに選挙が不利であったスタックスの人気が上昇する。これを使わない手はないと、選挙スタッフはアニーとスタックスの感激の再会を手配し、子供嫌いのスタックスの豪華なマンションに選挙の間アニーを住まわせることにする。アニーもメディアに出る機会が増すことで親に会えるかもしれないと同居を承知するが、スタックスの偏屈な性格もありギクシャクした関係がつづく。
しかし、アニーの持つあかるい前向きな性格、物おじしない可愛い言動にスタックスもアニーに愛情を覚えはじめた矢先・・・・。
現在の時代に設定をリニューアルし、アニー役を黒人の少女としたこの作品は、元の作品へのリスペクトを随所に織り込みながら、不幸な生い立ちを物ともせず常に前向きに進んでいく活発な少女アニーへの愛情を画面いっぱいに押し出し気持ちのいい作品に仕上げてきた。アニーを演じるクワベンジャネ・ウォレスの可愛い魅力によって、現代版『アニー』として蘇った作品となっている。
ぼくのチケット代は、2,100円出してもいい作品となっています。
星印は、3つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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