劇作家で演出家である平田オリザの小説を映画化した作品であり、ももいろクローバーZのガールズユニットの5人が主演した作品であり、県立高校の少女たちの演劇部の1年間の高校演劇祭に向けての努力を描いた作品である。
富士山の輪郭がくっきりと浮かぶ静岡県の富士ヶ丘高校。今年も演劇部は地区大会で予選落ちしてしまう。高校演劇は年1回しかないので、3年生にとって最後の大会となってしまう。1・2年生ばかりの少ない部員しか残っていない部で、さおりが部長に選出される。仲良しのユッコやがるるから半ば強制的に部長を押しつけられたのだ。
ユッコと一緒にいたいから演劇部に入ったさおりはあまり気のりがしないまま、新学期への準備をはじめる。4月、新歓オリエンテーションの場で、さおりが初演出した「ロミオとジュリエット」の抜粋版は惨澹たる出来ではげしく落ち込んでしまう。演劇部を辞めようと思うさおり。そんな折、新任の美術教師・吉岡先生と出会う。実は吉岡先生は大学時代、学生演劇の女王と称された役者だったのが、自分の才能に見切りをつけ高校教師になった人だった。将来の自分の目標が見えずイライラしていたさおりは、吉岡先生がそんな過去を持っていたとは知らず「今は等身大の自分を知る作業を演劇の中に入れたら」という助言に反抗するが「じゃあ、わたしがやってみるから」という吉岡先生の演技に感動してしまう。部員たちも吉岡先生に心酔し、今までの遊び半分の部活が一変し、さおりの演出監督を中心にまとまっていく。吉岡先生も見るだけと言いながら熱心に助言し、今年の劇を「銀河鉄道の夜」とし、脚本・演出をさおりが担当し、本格的な舞台稽古をするようになる。そして富士ヶ丘高校ははじめて地区予選を突破し県大会に駒を進めることになった時、吉岡先生から部員へ一通の手紙が届くのだが・・・。
本広監督は、単なるアイドル映画を拒否し、平田オリザの小説を『桐島、部活やめるってよ』の喜安浩平に脚本を依頼して、高校演劇の一年間の流れをさおりの演出監督としての精神的成長を中心に、手抜きのない青春ドラマとして描こうと試みる。
各人の台詞も多く本格的演技を、ももいろクローバーZのガールズユニットに注文し、かなり厳しく演技指導している。もちろん、なかり舌ったらずな台詞、演技は見られるものの懸命に監督の期待に応えようとした彼女たちによって、好感の持てる作品となったのは嬉しい!また吉岡先生の黒木華の演技がこの作品を生かした。
ぼくのチケット代は、2,000円だしてもいい作品でした。
星印は、3つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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