文庫本で6冊!三部構成になっている宮部みゆきの3000ページ以上に及ぶ長編小説の映画化作品である。
そのため映画化に当たって<前編・事件><後編・裁判>の二部構成とし、合計4時間以上となる作品となっており、この作品はひとりの少年の死からはじまる周辺の顛末を措く包容となっている。
日本経済にこの後、長期にわたる沈滞をもたらしたバブル経済がはじけはじめた1990年のクリスマスの日、東京の城東第三中学では終業式が行われた。二年生の藤野涼子と野田健一はうさぎの世話のため早目に登校し、雪の中に埋もれていた同級生・相木卓也の死体を発見する。警察の検死の結果、自殺と判断されるが、卓也の死は殺人であるという告発状が校長の津崎と担任の森内恵美子、そして学級委員長の涼子のもとに送られてくる。文章には殺したのは中学の不良である大出俊次とその仲間のふたりであると名指しされていた。管轄の少年課の刑事・佐々木礼子は内部の仕業と判断し、校長の許可を得てクラスの生徒へのカウンセリングを開始する。だが担任の森内に当てた文書が何者かの手によってテレビ局に送られ報道記者の茂木が校長に取材にくる。佐々木刑事は文書を出した犯人は、大出たちから執拗ないじめをされていた三宅樹里と浅井松子と面談の結果確信するが、校長は新たないじめが起こるのを苦慮し調べを断る。
4月、取材していたテレビ局は、この出来事は殺人であるという前提で報道する。
学校は保護者会を開いて佐々木刑事の詳しい捜査説明で告発状の誤りを正す。松子の母はその事を家庭で話すと松子は、雨の中血相を変えて樹里に会いに行き、その帰りにトラックに撥ねられ亡くなってしまう。樹里と松子がいじめにあっている所から逃げた涼子は、もう逃げないと決心し校内裁判を開いて真相を追及しようと決心し学校に仲間と掛け合う、そして8月、校内裁判がはじまる、その中には他校の生徒・神原和彦の姿があった…。
宮部みゆきの大長編小説を映画化するに当たって、かなりの登場人物を割愛しなければ映画の長さとして成立しえない。その切り取り作業に関して賛否両論があると思うが、藤野涼子に焦点を絞っての作品作りではないと、映画の内容がばらけてしまうのは必然であり、この手法は仕様がないと考える。だから小説の読者の方々からは不満の声が上がるのを覚悟で映画化に挑戦した成島監督の勇気はよしとしたい!
主役の藤野涼子は読者にもイメージに近い少女なので是非見て欲しい作品である。
ぼくのチケット代は、2,100円出してもいい作品でした。
星印は、後編を見て判断したいのですが、一応前編だけでは3つ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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