世界中の映画ファンを驚愕させた『マトリックス』3部作(1999~2003)のウォシャウスキー妹弟が、今回はスペース・オペラに挑んできた作品だ。
ロシアからアメリカに移民してきた娘・ジュピターは、親族と暮らしているが、生活は苦しくハウス・キーパーで生計を立てている。
そんな誰からも顧みられないジュピターが、突然襲われ命を奪われそうになる。が、ケインという屈強な男に救われる。何が何だかわからないジュピターだったが、ケインの仲間スティンガーの所に連れて行かれたジュピターは、彼から自分の本当の身分を聞かされる。宇宙全体の惑星を支配するアブラサクス一族の女王の正統な後継者の遺伝子をジュピターが持っているというのだ。女王セラフィが10万年にわたって君臨したアブラサクス家は、女王の死後、三人の子供が宇宙を分割統治していたのだが、内紛状態にあり女王の完璧な遺伝子配合を受け継いだジュピターを抹殺しようとする長男に対して、ジュピターを懐柔して味方につけよう計る末子の命令により、狼と人間の遺伝子配合を持つ最強の戦士ケインが抹殺計画を阻止するために地球に派遣されたのだ。
そして、ある事情から戦士の身分を降格されたケインとスティンガーは、ジュピターを救えば元の身分と体にもどれると聞かされるが、献身的にジュピターを守ろうとするケインにジュピターは魅かれていく。そしてジュピターはケインと地球からはるかに離れた木星や土星に本拠地を置くアブラサクス家の子供たちに会うために旅立つ。
だがそこでアブラサクス家の子供たちに会っていく内に、アブラサクス一族が長年にわたって統治する各惑星で行ってきた恐るべき事実を知り、その所業が間もなく地球で行われることを知る。ジュピターは愛する地球を救うため、ケインやその仲間の戦士たちと共に、宇宙上で絶大な権勢を誇るアブラサクス一族に反旗を翻し戦うことを決意したのだが・・・・・。
貧しい地球の子が、実は宇宙の惑星を侍る超高貴な身分の子であった、というシンデレラ・ストーリーをベースに置きながら、壮大なスペース・オペラのドラマとして展開するこの作品は、ウォシャウスキー姉弟の装飾過多な造形構成を持つ演出で独特な味を有する内容となっている。しかし、その装飾過多な演出に重きを置きすぎて、主役のジュピターの輪郭描写の整理がかなり荒っぽくなり、見るぼくらが急転直下の展開になかなかついていけない内容になってしまったのが少し残念であった。
ぼくのチケット代は2,000円を出したい作品でした。
星印は、3つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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