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ソロモンの偽証<後編・裁判>

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   2015/04/14

衛藤賢史のシネマ教室

長編小説の映画化のむつかしさを改めて思い知った後編の裁判編でした。
幾層にも折りたたまれた沢山の登場人物による綿密な構成の小説を、上演時間と照らし合わせながら、思い切って単純化せざるを得ない時間芸術の映画にとって、やむなく大事な登場人物を端折るか複数の人物をひとりに統合してしまう操作は仕方ないのだが、裁判で浮かび上がる真相内容にたどりつくための描写で、端折った登場人物の思いや、心の闇を伝えることが非常に難しい作業になり、観客に内容をわかりやすくするための説明的シーンの挿入が多くなってしまった感がある。
この<後編:裁判>の軸は涼子の神原への疑惑感から生じるクライマックスとなる。
あの事件から半年後の8月15日、学校内裁判が開廷された。
裁判の日程は5日間。涼子は検事、神原が弁護人。神原が大出を説得し被告として出席することになった。証人として佐々木礼子刑事、津崎元校長、森内元教諭が2日間証言し、涼子が検事として質問を浴びせる。3日目、告発状を書いたと見られる三宅樹里が涼子の説得により出廷した。樹里は何と、告発状を書いたのはなくなった浅井松子であり自分は無実と主張し、涼子を愕然とさせる。裁判4日目、大出の無実を証明する証人が出廷したことによって局面は大きく変化した!涼子の父である警視庁刑事の剛が尽力したのだ。しかし、神原の大出に対する質問は、大出の顔から血の気が引く言葉となる。いろいろな状況から、なぜ他校の生徒である神原が大出の弁護を希望したかについて疑問を持つ涼子は、はっきりとした疑惑の念になりはじめた。
そして裁判最終日、涼子はある決心をすることになる…。
模擬裁判をする中学生の一途な思いが結集するこの<裁判>は、個性的な生徒たちの役割分担の妙と、役割に沿った下調べの綿密さを裁判で発表する丁々発止のやり取りがこの現代社会の歪みへの寓意的物語の大事な核となってはじめて成立する。だから映画でも<裁判>だけで146分という長さにしたはずなのだ。しかし、残念だったのは涼子と神原のやり取り、質問への台詞があまりインパクトがないのだ!この作品が真摯な態度で作られているのを十分に理解し、リスペクトをするのは惜しまないのが、この大事なシーンのふたりの核心をつく台詞が弱いのが臥龍点睛を欠いた感がする作品となった。
ぼくのチケット代は2,000円を出したい作品でした。
星印は3つ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2000円

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