南アのヨハネスブルグを舞台にした、このロボットSFは最後の最後まで見る人の目を釘づけにさせる、痛快かつスリリングな展開にあふれる内容となっている。
チャウ・シンチーの『西遊記』同様、エンタテイメントでありながら監督がこの作品で観客であるぼくらに何を<テーマ>として伝えたいのか!ということもしっかり認識できる上質の楽しい作品となっているのだ。
近未来のヨハネスブルグの街。凶悪犯罪が激増し、警察の犠牲者が多くなり手を焼いた警察本部は若き天才科学者・ディオンの開発した自律型警官ロボットを採用し、大きな成果をあげた。凶悪犯罪者のニンジャたちは大ボスへの借金を返すためにディオンを誘拐し警官ロボットの電源を切らせようと考える。その頃、ディオンはさらに進化した人工知能(AI)ロボットの開発に成功したものの、女性社長・ミシェルからは開発拒否を命じられる。頭にきたディオンは廃棄用の警官ロボットを自宅に持ち帰りAIを施そうとしたときに、ロボット諸共ニンジャ一味に拉致されてしまう。ニンジャたちの指示のもとに起動されたAIロボットは<チャッピー>と命名されたが、生まれたばかりの赤ん坊状態。ニンジャの恋人・ヨーランディはすっかりママ気分になってしまう。ニンジャたちは手取り足取りしてチャッピーをギャングに仕立てる教育をはじめる。しかしヨーランディとディオンはチャッピーにまじめに暮らしてもらいたいと思っていたが、ディオンの同僚・ヴィンセントの謀りごとでひどい目にあったチャッピーはニンジャたちとギャングの真似事をはじめてしまう。だが意識を持ったチャッピーは本体が廃棄用のロボットを使用したためバッテリーが5日間の余力しかなく、あと5日間で自分が死ぬことを知り、ディオンたちの人知を超えた行動を開始するのだが・・・・。
ロボット版ピノキオと思う仕立てだが、このチャッピーの成長過程の様子が本当に可愛らしいのだ!そして教育の刷り込みの怖さ、愛し愛される幸福な感覚を教育で覚えたチャッピーの行動に異種を超えた<愛>の観念の大切さを、この痛快エンタテイメントな内容に根源テーマとしてしっかり書き込んだN・ブロムカンプ監督の作劇の巧みさに、脱帽するしかない作品となっている!
ぼくのチケット代は2,500円出してもいいと思う作品でした。
星印は、5つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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