「ヘヴンズストーリー(2010年)」でベルリン国際映画祭の批評家連盟賞を受賞した瀬々敬久監督(豊後高田市出身)の本多孝好の同名小説に挑んだ作品である。
1990年代、日本で極秘のプロジェクトが計画された。
それは人間の進化を人為的に操作しようとするもので、ふたつの方法が同時進行で実施された。ひとつは選ばれた親の脳内にストレスをかけることによって、異常なホルモンを体内に分泌させるというものであった。
その結果、生まれた子供たちは突然変異を起こし、人間の持つ潜在能力を極限まで発揮できるようになるというものであった。
もうひとつの方法は、親たちに動物や昆虫のDNAを植えつける人工的遺伝子操作であり、そこから生まれた子供たちは、別々に隔離されてプロジェクトのメンバーたちによって育てられたが、日本のバブル崩壊によって研究機関は閉鎖されたが、中心人物の渡瀬は子供たちの面倒を見ていた。
年月は過ぎ子供たちは成人した現在、渡瀬の下には<ストレス組>の昴をリーダーとする<チームスバル>の5人が残っていた。<DNA組>の6人はリーダーの学と共に渡瀬の下から逃げ出し<チームアゲハ>と称してその特殊能力を行使して犯罪を犯して生活していた。というのは、人為的操作によって生まれた彼らは常人にない超人能力の代償として普通の人間の半分にも満たない命しかなかったのだ。学たち6人はこんな人間として生まれたことを恨み、大人たちに復讐するため凶悪な犯罪をしていた。一方、昴はそれを運命として受け入れ、生きる意味を求める生活をしようとしていたし、同時にある日突然<破綻>という死が襲うのを防ぐ特効薬を渡瀬が所有していたので、学たちみたいに逃げられなかったのだ。
お互いの特殊な境遇へのシンパシーを持ちながら、<チームスバル><チームアゲハ>の特殊能力への自負を懸けて激突せざるを得ない2組のメンバーたち。普通の若者のように無限の未来への希望など望むべくない中で生き方とは…。
かなり重いテーマを背景にした、特殊能力者の若者たちのスーパーアクションという内容というむつかしい作品作りに苦戦してしまっている。残念ながら丁寧に作れば作るほど娯楽性と社会性が融合できずに、今ひとつ乗り切れない作品になってしまっている。
ぼくのチケット代は、1,800円出したい作品でした。
星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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