鳥取県出身のマンガ家・谷口シロー(『孤独のグルメ』etc)の哀愁溢れる原作マンガを、地方の人々の生活を描いてきた錦織良成監督が映画化した作品です。
1998年(平成10)。48歳の建築デザイナーの中原博史(大谷亮平)は、京都への出張帰りに故郷・鳥取の倉吉を訪れ、母の墓前でなぜか強烈な眠りに落ち、目覚めたときは40年前の1963年(昭和38)の世界にタイムスリップし、意識は48歳のまま、肉体は14歳の中学2年生の身体になってしまう不思議な現象が起こる。博史は思春期の少年として意識は48歳のまま、再び家族と向き合う生活をすることになる。そこには、祖母、小学生の妹、若き日の母(戸田菜穂)、そして、『中原洋服店』の主人であった父(滝藤賢一)の穏やかな姿があった。その時代は、日本が戦後の貧しさを忘れる復興期の最中で、新幹線や東京オリンピックの招聘で日本中が湧き上がり、ハリウッド映画の『ウエストサイド物語』のナタリー・ウッドやジョージ・チャキリスの人気が沸騰した時代でもあった。その時代を、48歳の意識で中学生の容姿の博史(及川桃利)は、初恋相手の優等生・長瀬智子(磯谷萌々子)から交際を求められ、それに気づいた悪友で小説家志望の島田大介から冷やかされ、経営する母の店から盗み隠していた大介のウイスキーをしこたま飲んで泥酔した意識は中年の博史は、身体は中学生だがオレは中年オヤジだと告白するが、大介からバカにされてしまう。その頃、父は帰りが遅くなったりの挙動不審の生活を送っていた。意識は中年のタイムスリッブの博史は、父がこの8月に密かに家を出るのを知っている、その日に倉吉駅から出ていくのを見張り、父とプラットホームで長く父・息子で話すが・・・。
もう戻れない過去のあまりに若かった未熟な生活を、博史の中年の目線を通して描かれる、静かな記憶の片隅を見つめながら、子どもだった頃の帰らぬ【時間】と向き合う物語。錦織監督の、昭和の記憶、甘酸っぱい青春の日々、当たり前のように過ごした家族とのもう帰らぬ光景を、鮮やかに脳裏に蘇らせるレトロな演出は、忘れえぬ過去への郷愁を、見る観客にも伝播させる力を持つ作品に仕上げていた。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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